Will you come to like me ?



「もし……君が僕を殺したいと思うのなら、それでいいと思う。」
そう言った俺の目の前の人は綺麗に微笑む。


『殺してやる』と言ったのは確かに俺だけど、今はそんな風に思ってはいない。むしろ逆だ。
「僕はね、ここに存在すること自体が間違いなんだ。だけど、自分で死ぬことが出来ないんだ……弱虫な上にズルイんだ、僕は。アスランたちに言っても止められるだけだろうから無理だし。君だったら僕の願いを叶えてくれそうだなって」
「どうしてそんなに死に急ぐんですか?あなたは今現在ここに生きてる。どんなに生きたくたって死んでしまった人だっているんだ。そんな人だっているのにどうしてあなたはそんなことを言うんですかっ!!」

どうして俺がこんな思いをしなければならない。
マユの敵だと思っていた人はこんなにも儚げで今にも消えてしまいそうだった。
あの時のことを忘れるわけではない。
……だけど、この人を亡くすのは嫌だ。もう、俺の大切な人を失いたくない。

そう、この人は俺にとって大切に人になってしまった。

毎日顔を見なければ不安になる。
泣いていたら優しく包んであげたい。
俺に笑顔を見せて欲しい。
名前を呼んで欲しい。

――もう、俺はあなた無しではいられない。だから。


「僕には生きる理由が無い」
「だったら……だったら俺のために生きればいい」
生きる理由が無いなら俺が作ってやる。
俺のために生きろ、なんてそんな勝手な理由であなたは少しくらい生きようという気になってくれるだろうか?
「…君、自分が変なこと言ってるってわかってる?」
「わかってますよ。殺すだなんて言っておいて、今度は生きろ、なんて。しかも俺のために。……でも、俺は本気ですから」
急に黙りこんでしまったキラさんに不安になる。

――やっぱりだめなのか。

アスランさんがどれだけ言っても、聞かなかったとアスランさんが言っていたのを思い出した。
俺なんかではあなたの生きる理由にはなれないのだろうか。

「面白いことを言うね、君は。僕、少し君に興味がわいたよ。……もう少し生きてみようかな、君のために」
そう言って俺に微笑みかける。
「だけど、君が僕の思うような人じゃないと判断したら、僕は君の前から消えるよ。違う誰かを探すために」
クスクスと笑う美しい人に俺は言う。
「安心してください。俺はあなたを逃がしませんから」
「そう。それは楽しみだな。…よろしくね、シン君」
そう言って手を差し出してくるキラさん。
握手するつもりだったらしいが、俺にそんなつもりは無かった。
「…え。ぅわっ!?」
差し出された手を引っ張って俺の腕の中に閉じ込めてしまう。
「キラさん。俺、あなたのことが大好きなんです」

憎しみよりも『好き』という気持ちの方が上回ってしまった。ただそれだけのこと。
だけど、それは俺の中では大きな変化だった。
そんな変化がキラさんにもあるといい、そう思う。
そして、その変化を与えるのが俺であってほしいとも思う。



「だから、俺のこと好きになってください」


-end.



後書き。
初シンキラ。どうですかね……。
ちょっとだけキラが黒め…かと思います。(当サイト比)




2005/ 5/ 1